インターネットが当たり前となった現代、ホームページやソフトウェアなどさまざまな商品において「ユーザビリティ」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
「ユーザビリティ」とは、一般的には「有用性」や「使いやすさ」を示す言葉ですが、実はそれだけでは不十分です。
特にWeb業界においては、「ユーザビリティ」の良し悪しが売り上げやビジネスなどの成果を大きく左右します。
今回はそんな「ユーザビリティ」について、ホームページなどでの意味や詳しい定義などをご紹介します。
【目次】
ユーザビリティとは?
Webサイトにおける「ユーザビリティ」とは、簡単に言うと「ユーザーがストレスを感じることなく、そのWebサイトでの本来の目的を達成するための操作が行えるようにできているか」を示すものです。
例えばECサイトで、Tシャツの購入を考えているユーザーがいるとします。
欲しいTシャツを見つけ、カートに入れたはいいものの、購入ボタンがどこにあるのかわからず、結局何も購入せずにサイトを離れてしまう...といったホームページはユーザビリティが良いとは言えません。
対して、初めてサイトに訪れたユーザーでも商品の検索から購入までの一連の流れをストレスフリーでスムーズに行えた場合、そのホームページはユーザビリティが高いと言えます。
以上のことから「ユーザビリティ」は、「使いやすさ」という言葉だけでは表しきれない、サイトの使い心地や分かりやすさを含んだ考え方だと言えます。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティにはいくつかの定義が存在します。
その中でも代表的なものとして、国際規格のISO9241-11での定義やヤコブ・ニールセン博士による定義の2つが挙げられます。
ISO9241-11による定義
ユーザビリティはISO(国際標準化機構)によって、1998年に制定された国際規格です。
この規格で「ユーザビリティ」は以下のように定義されています。
ユーザビリティ:ある製品が、指定されたユーザーによって、特定の利用状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の、「有効さ」「効率」「ユーザー満足度」の違い
引用元:ISO 9241-11:2018
- 有効さ
ユーザーが、指定された目標を達成する上での正確性および完全性。- 効率
ユーザーが目標を達成する際に、正確性と完全性に費やした資源。- 満足度
製品使用に対して、不快さのないこと、および肯定的な態度。- 利用状況
ユーザー、仕事、装置(ハードウェアやソフトウェアおよび資材)、並びに製品が使用される物理的および社会的環境。
伝えたいことはなんとなくわかりますが、しっかり理解するにはなかなか難しい言い回しですよね。
そこで、動画配信サービスを例に少しだけ具体的に考えてみましょう。
ユーザーの目標を「観たい映画を探す」に指定したとします。
もし、ユーザーが観たい映画を探し出すことができなかったり、違う作品が出てくる可能性が高いなら、そのサービスは「有効さ」に欠けている状態と言えます。
また、目的の映画を見つけることができても、その映画を探すまでの検索行動に不必要な時間をかけてしまっているとするならこのサービスは「効率」に欠けている状態と言えます。
そして当然、こうしたサービスやサイトを利用した場合、ユーザーはストレスや不快感を感じ、「満足度」は極めて低くなります。2度とサービスを利用してもらえない可能性も十分にあり得るでしょう。
上記のことからこの動画配信サービスのユーザビリティは低いということになります。
このように、ISO9241-11による定義は「有効さ」「効率」「ユーザー満足度」の3つの観点からユーザビリティを評価しています。
ヤコブ・ニールセン博士による定義
ユーザビリティ研究の第一人者であるアメリカの工学博士のヤコブ・ニールセンは、著書『ユーザビリティエンジニアリング原論』の中で、下記の5つの要素が、ユーザビリティを構成するとしています。
- 学習しやすさ
システムは、ユーザーがすぐ作業を始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。 - 効率性
ユーザーが一度それについて学習すれば、あとは高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にしなければならない。 - 記憶しやすさ
ユーザーがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない。 - エラー発生率
システムはエラーの発生率を低くし、エラーが起こっても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。 - 主観的満足度
システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければならない。
ここでも先ほど挙げた動画配信サービスを例に考えてみましょう。
ユーザーがサービスを利用して、すぐに映画の検索方法がわからない、また観たい映画を見つけても、再生ボタンがどこにあるかわからないとなると「学習しやすさ」に欠けている状態と言えます。
一旦、使い方を理解し、一度再生した映画をもう一度観ようと思っても、検索履歴機能などがなく、またタイトルを入力する所からはじめなければいけないなど、操作を何度も繰り返し行う必要があるのなら「効率性」に欠けている状態と言えます。
また、数か月ぶりにサービスを利用する際、すぐに使い方を思い出せない場合は「記憶しやすさ」が低い可能性があります。
動画が途中で何回も止まったり、エラーによって何度も文字を入力しなければならなくなったりすれば、誰でもそこで利用を止めたくなるでしょう。
ウェブユーザビリティはなぜ重要なのか
ここまでで「ユーザビリティ」とは何か、またその定義を解説しました。
ユーザビリティの重要性は概ね理解して頂けたと思いますが、改めてホームページにおけるユーザビリティについて考えてみましょう。
ユーザーは、なにかしらの目的を持ってサイトを訪問し利用します。そのため、ユーザーが抱えているその目的に応えられることが何よりも重要だと考える人も多いでしょう。
しかし、その目的に辿り着くまでの道のりが分かりづらく、不必要な時間と労力を費やすとしたら、どうでしょうか。
大半のユーザーがそのサイトを理解しようとすることなく、途中で諦め、他のサイトに移動してしまうでしょう。そしてそのサイトには2度と訪問してくれない可能性も十分にあり得ます。
ウェブサイトをユーザーに繰り返し利用してもらうためには、サイトでの目的を達成できるという結果を求めるだけでは不十分で、そのサイトをより便利に分かりやすく、ユーザーにとって如何に負担なく目的を達成できるかという過程も同時に重視する必要があります。
つまり、ウェブサイトで成果を上げるには、ユーザビリティを高めることが必要不可欠となるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では、「ユーザビリティ」とは何かについて解説してきました。
ユーザビリティは、ユーザーへの満足度に大きな影響を与えます。
サイトへの訪問者は増えているのに、なかなか問い合わせや売り上げに繋がらない...そんな場合は、ウェブユーザビリティが低いサイトになってしまっているケースが非常に高いです。
サイトが「分かりづらい」「使いにくい」状態のままでは、Web集客をいくら頑張っても、ユーザーはすぐに離脱してしまうことになり、集客に投じたコストが無駄になってしまいます。
そうならないためにも、常にユーザーにとって使い心地がいいサイトになっているかを意識し、ユーザビリティの改善に務めることが大切です。
次回は、具体的なユーザビリティの改善方法について紹介したいと思います。