前回までの記事では、ユーザビリティの基礎知識についてや、ウェブユーザビリティをどのように改善したらいいのか?その改善方法をいくつか紹介してきました。
知らなきゃ損!ホームページ制作に必要な「ユーザビリティ」のキホン
ユーザビリティの改善方法と関連要素まとめ
第3回目となる今回は、ウェブユーザビリティをどのように分析すればいいのか、その具体的な分析方法についてご紹介します。
【目次】
ユーザビリティの分析とは?
「ウェブサイトの分析」と聞いて、はじめにGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを連想される方は多いのではないでしょうか。
ほとんどのウェブサービスの運営者は、アクセス解析ツールを活用し、ホームページの状態をリアルタイムで把握しています。
アクセス解析ツールでデータを分析すると、そのホームページのどこに問題があるのかおおよその推測はできますが、そのページがなぜ問題になっているのか、明確な理由までは把握することができません。
しかし、ウェブユーザビリティ分析なら、ユーザビリティ上のどこに問題があるのかだけではなく、なぜ問題なのか、その理由についても捉えることができます。
ユーザビリティ改善のための3つの具体的な分析方法
ウェブユーザビリティの分析は実際にサイトを使用してみて、そのサイトを利用するユーザーの行動やストレス要因等を観察・推測することで、ユーザビリティの問題点を解明していきます。
ウェブユーザビリティには主に、専門家が評価する方法とユーザー視点で評価する2つの方法に分類することができます。
ここでは、主に以下3つの分析方法をご紹介します。
- ヒューリスティック分析(専門家が評価する方法)
- 認知的ウォークスルー(専門家が評価する方法)
- ユーザビリティテスト(ユーザー視点で評価する方法)
ヒューリスティック分析(専門家が評価する方法)
「ヒューリスティック分析」とは、ヒューリスティックスと呼ばれる評価項目に基づいて、ウェブユーザビリティの専門家が対象となるホームページのユーザビリティ上の問題点を査定し、その課題を抽出していく分析方法です。
元々は、ウェブユーザビリティ研究の第一人者であるアメリカの工学博士であるヤコブ・ニールセンが、数多くのユーザビリティ問題を分析する中で「ヒューリスティック評価法」として考案した方法です。
その中で「ユーザビリティに関する10のヒューリスティック(10 heuritics)」として、ユーザビリティ問題の背後にある10項目の評価原則が挙げられています。
ヒューリスティック分析は、経験豊富なユーザビリティの専門家が、対象のホームページを実際に見ながら評価項目と照らし合わせて分析を行うため、精度の高い分析結果が期待できるという特徴があります。
また、ヒューリスティック分析は、分析するにあたり過去のデータや大量の資料を集めたり、ツールをサイトに読み込んだりする必要がないため、短期間で効率的に分析を行うことができるほか、分析対象のサイトやアプリがプロトタイプや仕様書の段階でも分析が可能なため、開発にかかるコストを抑えることができるというメリットがあります。
しかし一方で、ヒューリスティック分析は、分析を実施する専門家の主観に左右されるほか、評価項目と照らし合わせて行う手法であるとはいえ、分析者の経験量や熟練度などに依存する部分があり、それによって分析結果が変わってしまうといったデメリットがあります。
こうしたデメリットは、複数人の専門家が同時に分析を実施することで、客観性が増し、分析結果の偏りを防ぐことができます。
認知的ウォークスルー(専門家が評価する方法)
認知的ウォークスルーとは、ヒューリスティック分析と同様、専門家視点によって評価を行う分析方法です。
ウェブユーザビリティの専門家が、ターゲットユーザーになりきり、分析対象のホームページを実際に閲覧し、操作してみることによって、そのホームページのユーザビリティ上の問題点を指摘していく方法です。
実際のユーザーに協力してもらうのではなく、「ターゲットユーザーになりきる」ということがひとつの重要なポイントになるため、分析対象のホームページを利用するユーザーがどんな人で(ペルソナ)、どのようなニーズやゴール、期待を持ってサイトを訪問するのかということを実施前に充分に把握しておく必要があります。
そして、そのユーザーがニーズや目的を達成するために、どのような行動をとるのかといったユーザー行動シナリオを想定します。
例えば、音楽アプリで聴きたい音楽を再生するという目的だとすれば、アプリを開いて、目的の曲名またはアーティスト名を検索し、その曲をダウンロードした上で再生する、という流れを前もって行動シナリオとして策定します。
シナリオを策定したら、そのシナリオに基づいて、実際にサイトを閲覧・操作していきます。
操作を行う中で、ターゲットユーザーがどのように思考し、どのような感情を持ってサイトを利用するのかをシミュレーションしながら、ユーザーがストレスを感じやすい箇所などの問題点をウェブユーザビリティの専門家の経験則に基づいて抽出することで分析していきます。
ヒューリスティック分析同様、経験豊富なウェブユーザビリティの専門家が分析をおこなうため、信頼性や精度の高い分析結果が期待できます。
また、そのメリット・デメリットもヒューリスティック分析と同様となります。
ユーザビリティテスト(ユーザー視点で評価する方法)
ヒューリスティック分析や認知的ウォークスルーがウェブユーザビリティの専門家視点による評価・分析なのに対し、ユーザビリティテストは、ユーザー視点で行う分析方法になります。
ターゲットユーザーに、分析対象サイトを実際に閲覧・操作してもらい、その行動を観察することで、問題点を抽出していく分析方法です。
ユーザビリティテストの手順としては、まずターゲットユーザー像を明確化・具現化し、そのユーザーが分析対象のサイトをどのように使用し、どのような行動をとるのかなど、サイト内のあるべき動線を仮説として想定し、実際にユーザーに実施してもらうためのシナリオを作成します。
そしてそのシナリオの実施段階で、実際にサイトを操作してみて「つまずき」や「戸惑い」がないか、作成したシナリオを遂行できているかどうかを観察していき、当初に立てた仮説とマッチしていない問題点を抽出していきます。
ユーザビリティテストは、実際のユーザーの行動を観察する分析方法なので、ヒューリスティック分析や認知的ウォークスルーよりも客観的なデータが得られるほか、ユーザーがサイトを操作している際の心理状態も把握できるため、問題が起こる理由や原因を具体的に知ることができるというメリットがあります。
しかし一方で、事前の仮説設定を含めた調査設計の良し悪しが分析結果を大きく左右するといったリスクがあるほか、テストユーザーを一定数採用する必要があるため、他の方法と比べてどうしてもコストがかかってしまうといったデメリットがあります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、ウェブユーザビリティの代表的な分析方法をご紹介しました。
これまでの記事でもお伝えしてきた「ユーザーがストレスを感じることなく、そのサイトで目的を達成できるか」というユーザビリティの定義を満たすホームページにするためには、まず自身のサイトがどのような状況なのかを分析する必要があります。
分析方法には、他にも様々な種類がありますが、ここで紹介したいずれかの方法だけでも適切に実施されていれば、信頼性の高い分析結果を得ることができ、ユーザビリティの高いホームページに近づくことができるでしょう。